Hello!#10
Neighbors
手に取る人の創造力が
作品を完成へと導く
クリエイティブユニット
tupera tuperaツペラ ツペラ
ユニークなキャラクターデザインと独特な色使いに加えて、そう来たか!と思わず惹きつけられる物語。そんな手に取る人誰もがワクワクする作品を生み出すtupera tuperaさんが今回のゲスト。二人がアトリエをかまえるのは、京都の賀茂川沿い。大きな窓から差し込む陽光と風にゆれる緑が解放感たっぷり!自然の心地よさと“ワクワク”が同居する素敵な空間で、作品作りに対する思いや大切な原点について、互いに語らいました。
子どもも大人も楽しめる絵本作りを目指して
アガット商品企画大森庸恵(以下大森) 子どもはもちろん大人も夢中になってしまう、ツペラ ツペラさんの作品。実際、アガットのスタッフにもファンが多いんです。今回、お話を伺うのを楽しみにしていました。絵本の枠にとどまらず、イベントや講演、コンサートなど、新しい絵本体験を提供されている点も魅力的です。
「tupera tupera」亀山達矢(以下亀山) ありがとうございます。僕らの絵本は、読むだけでなく、聴いたり、書き込んだり、シールを貼ったりと、体験してもらう=使ってもらって完成するものだと思っているので。そして絵本だからといって子ども向けに作っていないんですよ。だって子どもと大人、どちらも楽しくないとつまらないじゃないですか。だから、イベント会場などで、大人が楽しんでリアクションしているのを見るとうれしくなりますね。
大森 そうなんですね。野菜を様々な動物に見立てて図鑑化するなど、想像もしなかった発想です。普段見慣れているものがそうなるのか!と、大人の私たちでもハッとさせられるユニークなアイデアばかりでワクワクします。現在の切り絵を使った創作のスタイルはいつからですか。
「tupera tupera」中川敦子(以下中川) 最初は、オリジナルの布地をパッチワークした小物を作って販売していました。それが、素材が布から紙に変わって切り絵に。そして絵本になったことで物語が生まれ登場人物も増えるので想像の幅がぐっと広がりました。子どもから大人まで読んでくれる人、全員が楽しめることって何だろう?と、二人でアイデアを出し合って制作しています。
アイデアを重ねて完成する、
ユニットならではの作品作り
大森 私は子どもの頃から絵本が大好きで。ツペラ ツペラさんの作品で印象に残っているのは『しろくまのパンツ』(ブロンズ新社)。インスタでも探しちゃうくらいしろくまが好きで思わず手に取りました。いざ読み始めようとすると、表紙に描かれたしろくまのパンツを脱がすところから物語が始まるという!
亀山 『しろくまのパンツ』は世界12言語で翻訳されています。世界中でパンツを脱がされているという(笑)。動物がパンツだけを穿いているユニークな世界を違和感なく表現できるのが、絵本の魅力だと思います。
大森 『パンダ銭湯』(絵本館)の設定も驚きでした。
亀山 常に新しいジャンルのものを作りたいという気持ちはありますが、それを狙っているわけではありません。『パンダ銭湯』も、今では代表作として扱われていますが、実際にはテレビを見ているときにふと浮かんだアイデアが元なんです。僕一人だとその瞬間のひらめきで終わってしまうこともありますが、そこから二人でアイデアを出し合い、重ねていくことで、作品として完成させることができる。これが、ツペラ ツペラというユニットならではの強みだと思います。
絵本とジュエリー、
共通するクリエイションの源
大森 『かおPLAY!』(ブルーシープ)のようなワークブックスタイルも新鮮でした。読み手の創造性や感性が加わることでひとつの作品が完成する。その過程がジュエリーと似ていると感じました。ジュエリーも、まとう人のセンスやシーンによって異なる表情を見せるものなので。
亀山 イベント会場などで「こんなのできました!」と、描き込んだ絵本を見せてもらうことがありますが、何ひとつ同じ作品がないのも面白いところです。手を加えたり重ねたりすることで、ひとつの同じ絵本が“その人らしい”作品になるんですよね。僕らは、絵本を作って終わりではなく、子どもも大人も分け隔てなく手に取った人がどのように楽しんでくれるかが何よりも大切だと思っています。
中川 私たちは作品を自分たちのためだけに作っているわけではなく、誰かに喜んでもらえるかな、楽しんでもらえるかなと考えながら作っています。読者はもちろん制作に関わる編集者やスタッフにも「お!」と思ってもらえるように、その気持ちが創作のエネルギーになっていますね。
大森 わかります。私たちも同じジュエリーでも、お客様がSNSにアップしたものや店舗でスタッフがディスプレイを作っているのを見ると、まったく予想もしなかった組み合わせやスタイリングが生まれることがあります。そうした発見に新鮮な驚きを感じると同時に、人それぞれの楽しみ方がどんどん広がっていくのを見ていると、本当にワクワクします。
切り絵のように
ジュエリーのレイヤードを楽しむ
大森 普段はどのようにジュエリーを楽しんでいますか。
中川 色や柄ものの洋服が好きで、いろいろなジュエリーをデコラティブに楽しんでいましたが、子育てが始まってからは、外向けというか特別な日にまとう程度になっています。とはいえ、年齢を重ねてスタイリングの際に“何か足りない!”と感じることも多くなってきたので、今日をきっかけにまたジュエリーを普段から楽しみたいと思います。
亀山 僕は三重県出身で、実家が真珠屋だったんです。家のいたるところに真珠(パール)があるのが日常でしたが、小学生の頃はただの白い玉にしか見えなかったんですけどね(笑)。帽子とかメガネとか小物は好きでお気に入りをコレクションしているのですが、ジュエリーはあまり馴染みがないですね。
大森 今日は、北欧をテーマにした2024年・冬の新作をお持ちしました。ダイヤモンドダストをイメージしたデザインなど、北欧ならではの力強くも幻想的な自然美が感じられるコレクションです。しろくまやソリのモチーフなど遊び心のあるチャームもありますよ。
亀山 ちょっといろいろ着けてみようかな。選ぶのも楽しいですね。
大森 亀山さんは今日の襟付きのシャツでしたら、細めのネックレスをプラスしてもよさそう。中川さんはショートカットが素敵ですし、イヤカフとピアスの両方を組み合わせてみても。
中川 重ね着けは難しくて自分ではあんまりできないんですよ、イヤカフだとトライしやすいですね。ネックレスのレイヤードも新鮮です。組み合わせるときのコツなどはあるのですか?
大森 フィーリングで選んでいただいて大丈夫です! どれも風合いや色合いに個性がありますがシンプルな仕立てですので、何を合わせてもアガットらしいこなれ感が生まれます。
風合いや手触り、
着け心地に惹きつけられて
大森 お二人とも、手を使うお仕事なので、リングがあると手元が華やかになり、視界に入るたびに気分が上がると思うのですが、いかがですか?
中川 リングはあまりしないんですよね。指周りがゴツゴツしてしまうと作業するときに気になってしまって。でも今日のリングはどれも指にすっと馴染みます。切り絵のときもそうなのですが、紙の厚みや手触りがしっくりくる感覚に似ています。この色石のリング、素敵です。角度によって色が変わるんですね!
大森 このリングは、虹色に輝くアンモライトの遊色をオーロラの光に見立て、北欧の壮大な風景を表現したものです。小さなダイヤモンドと繊細な透かし細工が施されていて、全体的には軽やかに仕上がっているので、どんなファッションとも相性が良いんですよ。
亀山さんも、リングの重ね着けはいかがですか。お帽子が好きならイヤカフをぜひ!
亀山 気持ちいいですね。耳にふれると(笑)。自分にジュエリーは似合わないと思っていたけれど、帽子やメガネと同じで、手に取るもの、肌にふれるものは愛着がわきますね。リングの重ね着けも初めてですが、意外としっくりきて驚いています。
中川 むしろ馴染んでいる(笑)。亀山は普段ジュエリーを着けないのに、とっても自然。このきらきらしたのはダイヤモンドですか。
大森 そうです。亀山さんのリングにはクラフトを感じさせるシルバーの面に小さなダイヤモンドをちりばめて、ダイヤモンドダストを表現しています。特別感がありながら、着ける人に寄り添い溶け込む、絶妙なバランスなんです。ユニセックスで展開していますから、中川さんとのペアリングにもぴったりですよ。
旅が生む創作の力と、絵本が広げる新たな世界
大森 アガットでは、「旅するアガット」をテーマに2024年の新作をシーズンごとに発表してきました。お二人も様々な場所でワークショップなどのイベントをされていますが、旅が作品作りに与える影響はありますか。
亀山 知らない土地に行って、現地の人たちと交流し、一緒にご飯を食べたりすることで、新しい刺激を得ることができます。直接的に創作のインスピレーションにつながるというよりも、むしろ創作意欲が高まる感覚ですね。自分たちの作品を手にしてくれる人々と出会うことで、新たなエネルギーをもらえます。
大森 今回着けていただいた2024年のコレクションは「旅」を前面に打ち出していますが、シーズンに限らずブランドのオリジンには「旅」があります。シーズンごとのテーマ設定やコンセプトワークにはじまり、デザイン、使用する石やテクニックの選定に至るまで、世界各国の文化や歴史からインスピレーションを受け、そのエッセンスが反映されています。アガットのジュエリーをまとうことで、世界中を旅している気分を味わってほしいという想いが、アイテムの一つひとつに込められているのです。
中川 じつは、絵本って、ほんの数秒や数分で別の世界に連れて行く、そんなショートトリップを提供できると思っているんです。以前、亀山のおばあちゃんがパーキンソン病で入院していた時に「パンダ銭湯」を読んであげたら、目が笑ったんです。うれしかったですね。これからも、読者を旅へと誘うような絵本作りを続けていきたいですね。
身につけることで新しい場所へ誘う
中川 私は、自然や風景にとても癒やされるんです。旅先で出合う花や草木にも惹かれます。今回のアガットさんのジュエリーも、北欧の自然をモチーフにしながらモードに仕立てられていて、とても素敵だなと思いました。
大森 アガットは、手触りやクラフト感、そしてアンティークなムードを大切にしていますから、自然モチーフと相性がいいのかもしれません。また、ジュエリーには時間とともに深まる風合いもあります。身にまとうたびに少しずつ変化し、自分だけの一品へと育て上げていく。その経年変化を楽しむ過程は、まさに終わりのない旅のようなものです。
亀山 僕は帽子をコレクションしているんですが、お気に入りの帽子をかぶると、気分がぐっと上がります。そして、その気分に合わせて、普段より少し背伸びした場所に出かけたくなるんです。ジュエリーも同じで、身に着けることで気分が高まり、それにふさわしい新しい場所へと誘ってくれるように感じます。これもまたひとつの旅ですね。
世代を超えてタイムレスに愛される絵本を作り続けたい
大森 今後のビジョンを教えてください。
亀山 ここ数年はイベントや展覧会などの対外的な活動が続いていましたが、やはり絵本作りの原点に戻りたいという気持ちが強くなっています。多い年で年間3~4冊出版していたのに昨年は1冊しか作れていなくて。でも今、新作を制作中なので、楽しみにしていてください!
中川 そうですね。それ以外にもまだまだ作りたい絵本のアイデアがあるので、じっくりと自分たちの創作に取り組める時間の余裕が欲しいですね。
大森 世代を超えて愛される絵本は、本当に素晴らしいと思います。ジュエリーもそうですが、親から子へ、そして孫へと世代を超えて愛され受け継がれるものがあるって、とても素敵です。お二人の絵本が大人になった子どもたちの心にどう影響を与えるのか、今から楽しみですね。
亀山 僕たちも、絵本を通して、大人が子ども心を思い出したり、大人と子どもが一緒に楽しめたりするものを作りたいと思っています。書店の絵本売り場だけでなく、いろんなカテゴリーの棚で手に取られるようになるとうれしいですね。
中川 今日、ジュエリーに対する考え方が少し軽くなりました。アガットさんのジュエリーは、気負って身に着けるものではなく、自然体で楽しめてかつ身に着けることで、なんだか誇らしい気持ちになりますね。今度、ジュエリーをまといながら絵本を作ってみたいと思います。どんな作品が生まれるのか、考えるだけでワクワクしてきます!
大森 うれしいです。絵本もジュエリーも、手に取ってくれた人たち、それぞれが自由に自分なりに楽しんでくれて初めて完成するものですね。今日は、ありがとうございました。
クリエイティブユニット
tupera tuperaツペラ ツペラ
亀山達矢と中川敦子による、クリエイティブユニット。2002年より活動を開始。 絵本やイラストレーションをはじめ、工作、ワークショップ、アートディレクションなど、様々な分野で幅広く活動している。 絵本ほか、著書多数。NHK Eテレの工作番組「ノージーのひらめき工房」のアートディレクションも担当。『わくせいキャベジ動物図鑑』(アリス館)で第23回日本絵本賞大賞を受賞のほか、受賞作品多数。
●本記事に掲載した商品の価格はすべて税込価格になります。
●掲載商品の在庫状況は日々変動しており、完売している可能性もございますのでご了承ください。